はじめに
ITzoo.jpでは、経営コンサルタントの方々の支援をすることがよくあります。
コンサルタントの方々からいただく最も多い質問の一つとして、AI(機械学習やディープラーニング)の実装の方法やプロジェクトの進め方があります。
AIといえば、今では多くの方がどのような場面や業務で使えるかをご存じです。
一方で、どのようにして実際に使えるようにしていくかのステップはまだまだ知られていないところがあります。
家庭教師のトライのCMの1シーンでも、
「(AIに)データを食わせる」
のように、一般的な会話表現であるかのように使われています。
もちろん、今からでも充分に間に合いますので本稿で理解してください。
実際のケースから
私どもでも、現在でも経営者の方々などからAIに関連する質問をいただくことがあります。
ここで、実際によくある質疑とともに見ていきましょう。
社長と経営コンサルタントの山崎さんの会話をモデルにします。
本稿での社長からの質問や相談ならびにポイントは以下の5つです。
(1)データを食わせる目的
(2)AIプロジェクトが進まない理由
(3)データを食わせて上手くいったら次はどうするのか
(4)AIを使ってみての気づき
(5)実際にはどうやって実現しているのか
会話スタート・用語の整理から
社長:
「多くの企業がAIの導入を進めているようですね。
基本的な話ですが、機械学習とディープラーニングの違いについて教えてください。」
このような質問はもちろん現在でもあります。
コンサルタントの皆さんは、自分の言葉で説明できるように準備しておきましょう。
山崎:
「ちょっと丸めて申し上げますと、AI>機械学習>ディープラーニングの関係です。
機械学習は、コンピュータがサンプルのデータを反復して解析して、データを整理する規則やルール、判断基準などもデータベースに蓄積していきます。
処理を必要とするデータに対して蓄積したデータベースをもとに実行します。」
(ここは、たたみかけないで、一息おいてから、説明したほうがいいです。)
山崎:
「ディープラーニングは、膨大で多様なデータから自律的に特徴を学習する人間の脳のようなかたちで処理を実行します。
少し要約した説明になりますが、機械学習は特徴量を人が示して、ディープラーニングは特徴量の抽出もコンピュータが実行します。
特徴量とは、果物のバナナを例にとると、黄色い、長さ20cmくらいなどのような、人が測定できる特徴のことです。」
社長:
「なるほど、私には特徴量で説明してもらえるとわかりやすいです。」
この受け答えは「○」であるとして、以降は社長の関心や会社の状況によって質問や相談は異なります。
続いて、具体例で見ていきます。
データを食わせる目的
社長:
「機械学習についてもう少し知りたいです。CMでデータを食わせると言ってましたが、どういうことでしょうか?」
CMを見た方などからはこのような質問が来ることもあります。
ここでさらっと回答するのがコンサルタントらしさです。
山崎:
「AIにデータを食わせるのは、使えるようにしていくなかでの必須のステップです。
実際によくある進め方でお話ししますと、実物のデータからモデルとなるデータを抽出します。
「学習データ」や「教師ありデータ」などと呼びます。
それらをもとに、モデルとロジックの概要を定義します。」
社長:
「勉強であれば、こういう問題はこういう解法で解くのようなことでしょうか。」
山崎:
「その通りです。
例えば、図のような個人ローンの審査の例では、年齢、職業、融資金額、他の借り入れ、などの組み合わせから判断をしています。
最終的にはOKかNGに分類されます。
(OKに近いNGもあります。
このグレーゾーンのセグメントの明確化が実は最も重要だったりします。<生の現場情報>)
AIにデータを入力することを食わせるといっていますが、多ければ多いほど高い精度になります。
実際に計算をして人間の判断と同じになれば第一段階はクリアです。」
AIプロジェクトが進まない理由
社長:
「実は、友人の会社ではAIのプロジェクトが上手くいっていないと聞きました。」
山崎:
「確かに実態としてはそのとおりです。実は先ほどの例のようにスムーズに進むことは希です。
現場での導入ではいくつかの壁があります。
・データが複数のシステムや業務に散らばっていて集めるのに時間がかかる
・データが構造化されていない(ExcelやAccessなどに入らない)
・そもそもメモや紙が主体でデータ化自体が進んでいない
AI導入以前といいますか、準備が必要ということですね。」
食わせて上手くいったら次はどうするのか
社長:
「話が戻りますが、モデルのデータで上手くいった後はどのように進めるのですか。」
山崎:
「AIにデータとロジックを覚えさせたら、別のデータで評価をします。
この評価で人間と同じような判断ができたら実務レベルで使うことができます。
このようなステップを繰り返して精度を上げていきます。」
AIを使ってみての気づき
山崎:
「実際にAIをシステムとして使ってみると面白い発見があります。
人間の判断と異なるときがあるのですが、よくよく確認すると、以前の人間の判断が間違っていたということもあります。
<生の現場情報・実際によくあります>」
社長:
「そういうこともあるのですね。」
山崎:
「それと、やはり人間でないと難しいこともあります。
例えば先ほどの融資の例であれば、地元の方を優遇するとか(AIには地元がどこかわからない)。
AIは人間と比べるとデータ量が少ないことが多く、また、ビジネスの背景にある考え方や理念などをデータに置き換えることも難しいので。」
実際にはどうやって実現しているのか
社長:
「実際にAIを使っている企業は、どのように実装しているのですか。」
山崎:
「クラウドサービスなどでは機械学習やディープラーニングが使えるようになっています。
そこで、どのようなモデルでロジックはこのようなかたちと定義した後で、データをアップロードして計算させています。
比較的簡単に実行するのであれば、AIにデータを入力して結果を受け取るしくみを既存のシステムにアドオンします。
自社でゼロから開発するような企業はごく一握りの大手企業くらいです。<生の現場情報>」
おわりに
本稿では、5つのポイントを紹介しました。
もちろん、ご存じの話もあるかと思いますが、進め方や現場の裏話など、AIの理解とお客様との会話などでお役立てください。